ブログ「いらけれ」

世界が終わるまでに、やりたいことは?

僕が野球場にいた頃に、アマゾンから荷物が届いていた。近頃は、デリバリープロバイダが配達してくれるのだが、配達人がなんか、いつも灰色のフードを被った人で、怪しいと不平を言っている家族が受け取ってくれていた。
届いていた鼻毛カッターで鼻毛を切って、日焼け止めを塗って、フレグランスミストを付けた。準備万端、ここまでは順調、いい感じだ。

朝の電車に乗ったのは、いつ以来だろうか。満員電車はなくなればいいと、誰もが思っているはずなのにね。立ってスマートフォンを見ることぐらいしかできない僕は、相沢直「医学部平凡日記」を読む。これを今日読むことになったのは、たまたま未読のものがたまっていたからだ。しかし、面接ばかりの日に読むものとしては、最適だったのではないだろうか。自分を奮い立たせながら、一社目に向かうが、自分はうまくやれるだろうか。

一件目終わり。うまくやれたかどうかは相手が評価することだし、僕には分からないが、できることはやった。今まで面接で嫌な思いをした回数を数えたら、両手の指では足りないぐらいだから、嫌な思いをしなかっただけで「神」だと、そう思ってしまうのだが、今回は驚くべきことに楽しかった(「神」の上は、何と表せばいいのだろう)。あとは結果だ、祈るしかないな。

港区の、浜松町の辺りから渋谷へ向かうために、グーグルマップを頼りにバス乗り場へ歩いていると、スーツを着たおじさん二人組、結構な年収を稼いでいそうな人たちに、「○○ホテルはどこですか」と声をかけられる。その場で検索して、地図を見せた。めちゃくちゃ近かった。経団連会長の部屋に、やっとパソコンが導入されたというニュースを思い出した。分断感があるなと思った。

都バスが都会を走っていく。電車とバスなら、バスの方が危なそうでもバスに乗ったのは、観察と分析のためだったが、窓から見える景色は、この前の、新宿から秋葉原まで歩いたときのものと、ほぼ同じ。そりゃそうだろう。
興味深かったのは、乗り込んでくる人たちの雰囲気が、東村山を走るバスの乗客と変わらなかったことだ。でも、平日の昼間に都バスに乗っている人と東村山人は、育ちとか職業とか、全然違うはずだ。おそらく、どんどんと人々の均一化が進んでいるのだろう。それは、ユニクロを着ている人の年収が一億円みたいな世界が、容易に想像できるということ。でもまあ、単に僕が目が利かないだけで、良い服を着ていたのかもしれないけれど。

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レインコートを着用して席に戻ると、雨の勢いは少し弱まっていて、「わざわざ買う必要なかったかなー、はっはっは」などと軽口を叩いていたが、その先にあったのは野球観戦ではなく、降りしきる雨への忍耐だった。滝に打たれているかのようだった。とても寒くて、会話の8割が雨のことになってしまった僕らは、試合終了を待たず、7回終了時に泣く泣くその場を離れることにした。

球場から大きな歓声が聞こえて、追加点を奪われたことを知る。負ける瞬間を見なくて済んだと思えば、まあ、悪いことじゃないんだと自分を納得させる。近くの野外ビアガーデン施設は、人っ子一人いないのにまだ開いていて、施設内の大きな滝は流れ続けていた。本当に柔軟な対応ができない社会だとも思うが、それによって助かること、助かる場面もあるだろうから、難しいよねという話をした。

信濃町から高田馬場へ、乗り換えのためにそこで一旦降りる。西武新宿線が、人身事故によって止まっていたのも、運転再開したばかりなのも知っていた。だから、甘く見ていたということなのだろう。階段を上ったところで窓から見えたホームは、リョコウバトを思い出させるほど混んでいたし、人で溢れかえった改札前の空気は、異常な湿気を帯びていた。引き返して山手線、池袋からも帰ることができるというのは、東村山に住んでいる利点である。

急行を一本見送って、次の準急では座ることができた。あの混雑を思えば、天国と地獄だ。出発進行した車内では、手に汗を握りながら、スマートフォンの画面を見ていた。9回裏を、1点ビハインドで迎えたヤクルトが、少しずつチャンスを拡大していく。デッドボールやフォアボールで、2アウトながら満塁。残念ながら、映像を見る手段を持っていなかったために、スポーツナビの野球速報の更新を待っていた。逆転したら、とてつもないドラマだ、が、どうやっても、もう目の前では見られない。やけに複雑な気持ちを抱えたことは、しかしながら無意味なことで、最後は奥村の三振で試合が終わった。

所沢で立ち食いそばに寄って、久米川で別れた。雨はすっかり弱まっていたから、少し歩こうかとも思ったが、やめておく。シャワーを浴びて湯船につかり、体を労わってから布団に入る。昨日までに、履歴書の準備を終えておいて、本当によかった(やればできる子!)。明日は朝から面接があり、3社回らなければならなかった。僕はちゃんとやり通せるだろうかと、不安に思いながら眠った。

目が覚めた。

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17連敗(予定)。そちらの世界はどうなりましたか?
追記:昨日の僕へ。勝ちましたよ、泣きそうです。

事前に知っていたわけではなかったのだが、ベンチ前の白い塊をあざとく見つける。このチームは、負けだすと清めの塩を盛りがちなのだ。だから、絶対にあるはずだと思って、肉眼で発見した。友人が検索してくれて、やっぱりニュースになっていた。

「マッチョ雄平のウィンナーⅡ」は、ウインナー盛りに雄平のステッカーが付いて1000円。普通のものが800円だったので、ステッカーが200円。頼むときに"マッチョ雄平"というフレーズを口に出すのが恥ずかしくて、「雄平選手の……」と注文したことをツッコまれながら、ビールとウインナーで見る野球。

ヤクルト打線はチャンスすら作ることができず、なんともピリッとしない攻撃を続けていた。一方の投手陣は、毎回のようにピンチを迎えながらも、ギリギリのところで、なんとか踏ん張っていた。そうしたなかで降り出した雨は、段々と勢いを増してきた。ビールの売り子さんが、お客さんに「雨ヤバいですよねー」というほどに。雨の予報を見ていた僕は、一応バスタオルも持っていっていたが、そんな武器では歯が立たなかった。

一旦中に入って、売店で雨具を求める。我々にポンチョを!あるいはレインコートを、と皆が雨合羽を求めている。600円のレインコートは、飛ぶように売れている。グッズ店では売り切れたから、近くのファーストフード店に「レインコートあります」と書いているので、半信半疑で「ありますか」と尋ねて、奥から取り出してもらったそれは、生地ペラペラでなんかヌルヌル、かつボタンがヨワヨワで、およそ600円とは思えない代物だった。野球を見に行く際には、事前に雨具を買っていこうというのが、僕の伝えたいティップスである。

ここからでは、よく分からない。僕はその時、雨に耐えながらも、しっかりとボールを目で追っていたが、この場所からではよく分からなかった。どうやら、テレビのスロー再生で見なければ、何が起きたか理解することの難しいプレーが展開されたようだ。審判の説明は、確かに分かりづらかった。それに対して、「おかしいだろ」、「当たってないよ」というヤジが飛んだ。
誰かを責めたいわけではないし、僕だって、似たような言葉を言ってしまったこともあるだろう。体育祭で審判を務めている先生に向かって、とか。しかし、自分たちに有利であれば、事実はどうだっていいという態度は、やっぱり良くないんじゃないかと、いつもフェイクニュース問題とかを考えている僕は思った。こういうのは良くないよなって、気づいたり学んだりするところに、野球場はならなければならないと、僕はそう考えるのだった。

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僕は、地獄にいるんだって思うことにしたから、辛いけど大丈夫だよ、16連敗だって何だって。

神宮球場のバックスクリーンの脇にはオープンハウスの広告が出ていて、それに打球を当てると東京の家が貰えることは、スワローズファンならば知っているという人も多いかもしれない。しかし、山田のあのホームランの直前に、この話をしていた人は、日本中に何人といなかっただろう。
ワンサイドで、退屈になりそうな試合だったから僕は、ホスピタリティ高く、持っている豆知識のすべてを友人に話していた。以前は、絶対に誰も当てられないであろうバックスクリーンの上部の看板だけが対象だったことや、まだ獲得した選手がいないことなど「まあ、当たらないよね」と言ったそばから、ボールは看板目がけて飛んで行った。

結果的には、数メートル手前で落ちてしまったようだったが、あまりの偶然に驚いて、そちらに気を取られてしまっていたが、その後も次々とヒット、ホームラン(村上の打ちそう感は、10代のなかで一番打ちそうだと話していた)、ヒット、ヒット!あれよあれよという間に、1点差に迫った。でも、あと一歩で勝ち越せないのが、連敗中のチームらしかった。

完全に受け身で連れてきてもらっていたので、そんなイベントがあるなんて知らなかったが、なんか、スポンサー企業による計らいで、5回が終わった後には。200発の花火が打ち上げられた。僕にとっては、今年初めての花火だ。
こうして写真に収めたのは、ほんの少しだけで、空に開いた光から目を離さずに僕は、じっと見ていたはずだった。でも、花火を見たのは確かなのに、それがどのようなものだったか、さっぱり思い出せない。記憶の花火のイメージは、今こうして写真を見たことで、この姿に上書きされ、固定された。

野球場で飲むビールは、なぜこれほどまでに美味しいのだろうか(ゴクゴク)。肴が足りなくなったので、つまめるものを探しに、二人で席を離れた。売店の並ぶ通路を歩いていたら、オールスターの投票箱がある。立ち止まって、マークシートを手に取り、塗りつぶし始めた。
パリーグで誰が活躍しているのか、知らないというほどではないが、知っていると胸を張れるほどでもない。『プロ野球ニュース』でよく見かける気がしないでもない(連敗が続いているため、半月ほど見られていないが)というイメージの選手を、なんとなくで選んでいく。セリーグは、ヤクルトの選手で全員を固めるというわけではなく、自軍を優先的に選びながらも、流石に外せないという坂本や鈴木誠也にマークを付けた。イメージで選んだり贔屓したりって、なんか、投票の本質って感じがしないだろうか。僕はした。