ブログ「いらけれ」

ただでさえ辛い状況なのだから、何事も肩の力を抜いてやること。先を思うと不安になるが、不安に思ったところで、未来を予想できるわけではない。予想できていればあんな小説は書かなかった。明日死ぬかもしれない。だから、未来の不安を先取りして、今を犠牲にしてはいけないのだ。仕事を辞めよう(って、何度も書いているくせに)。

これからは、聞いたラジオ番組やポッドキャストを記録していこうと思う。本読みましたとか、映画見ましたとか、なんか偉い。でも、ラジオ番組聞きましたと言っても、一つも偉くない感じがする。でもでも、こちとらTBSラジオ『文化系トークラジオLife』のすべての回を、2回以上聞いているんだぞ……と威張ったところで、誰も褒めてくれない感じ。何百冊も本を読むのと同じぐらい、すごいことだと思うんだけどなあ(私が、話の分かる人として重宝されるのは、間違いなくラジオのおかげである)。
今日聞いたもの:アトロク「古関裕而特集」、文化講演会「ノートル=ダムと文学」、飛ぶ教室の初回、文化系トークツイキャスLiveの前半部

本を読んでないと思われるのもしゃくなので、木原善彦『UFOとポストモダン』が面白かったと書きます。この本、空飛ぶ円盤伝説誕生のきっかけを作った(と言われている)のが、ソ連の核実験の音を探知するために、アメリカが極秘で開発していた超巨大な気球(ヒンデンブルク号の二倍の体積!)が風でひしゃげた姿、という話から始まるんですよ。ねえ。
あるいは。灰色のエイリアン像(いわゆるグレイ)を世間に強く印象づけたのは、宇宙人に誘拐されたと証言するヒル夫妻の事件と、その再現ドラマらしいのですが、この二人、当時は珍しかった黒人(夫・バーニー)と白人(妻・ベティー)の夫婦だったんですね。
それまで、地球人が出会ったとされる宇宙人の多くが白い肌をしていた(問題を抱える「私たち(語り手はもちろん白人であり、今よりも白人優位な時代において)」を手助けするために、先進的な文明からやってくる「彼ら」)のに対し、人種問題に悩む(再現ドラマのメインも、目撃事件ではなく人種問題への葛藤だったという)夫婦の元に訪れた(と語られた)のは、灰色の異星人だった。つまり、「人種を感じさせながらも人間を感じさせない」色であるグレイのエイリアン像が、そこで誕生することになったわけですね(異星人のイメージが大きく変容していることにも注意しよう)。
さらに、エイリアンが人類とのハイブリッドを作るために、人間を連れ去って実験しているという神話も、この夫妻の事件をきっかけとして根付いたそうなのですが、その背景には、異人種間の婚姻に対する人種的偏見があったのではないか、という話も興味深い。
目の前に表れているものだけを見ていても分からない、そこに歴史や時代、社会的な背景というフィルターを通して初めて見えてくるものがあって、これだから読書はやめられないと思う。こういう仕事を成し遂げる人を、心から尊敬する。