ブログ「いらけれ」

できないことを言葉にするのが物書きで、でも、そういうことができない人がSNSをやっているわけで、じゃあ映画や本をどうやって紹介するか、どのように書くかというときに、今一番便利な言葉が「ネタバレできないから何も言えない」なのではないだろうか。「ネタバレできないから何も言えないけど感動した」って言っとけば、すべてが済むわけで。インスタ映えみたいな言葉だ。

そういえばこの前、羽生竜王が秒読みについて語っていて、NHK杯や銀河戦のような秒読み30秒だと、一つの手が成立するかどうかだけしか考えられない、それがダメだと二つ目は勘に近くなってしまうが、一分あると(単純に時間が倍になるわけだから)二つの手を比較することができるので、大きく違うんだというような内容だった。「30秒で一つの手の善悪がある程度分かるのは、それは羽生竜王だからなのでは……」などといったことも含めて、この話は非常に興味深いわけだが、これの興味深さが分かる人ってのはどのくらい存在しているんだろうか、この世に。

ポッドキャスト収録のために移動。いつも録音している公園に人がいて、結局はとらなかったのだが。道沿いの家の壁に、セミの抜け殻がしがみついている。少し前までなら、何も思わなかったかもしれない。でも、あの台風を越えたのだと考えると、それはすごいことだ。
生垣に蜘蛛が巣を張っている。それだけなら普通のことだが、目線の高さにある巣の上の糸は、どう考えても頭上3メートルにある電線に繋がっている。蜘蛛は、この糸を使ったならば、それこそスパイダーマンのように飛び回って、生態系のトップに君臨できたのではないか。そう思うくらいすごい。
木が倒れていてすごい。細い川沿いに並ぶ大きな木の一本が、川をまたいで倒れている。やはりあの台風のせいだろうか。ガードレールが壊されている。道を塞いでいたのだろう、ぶっつりと切られて断面を見せている。木屑が落ちている。こういうのを見ると、SASUKEみたいに上を渡ってみたくなる。できないけど。
今生えている木が、こちらに倒れてくることを想像する。当たったら死ぬな。絶対安全ということを考えるならば、家の耐震構造を考えるように、並木が倒れる可能性も考えなければならないのだろうな。すべての事故を避け、すべての病気を疑わねばならないのだろうな。僕はまあ、死んだら死んだかな。

ちょっとずつ小説を読んでいる。とても面白い。とても面白いからこそ、こういうのはこの人がいればいい、この本があればいいと思う。同じ山に登る必要はない。面白さは一様ではないし。すでに書かれたものと、別の面白さを提供する役目が、ものを書く人にはある。