ジャンプ

ブログ「いらけれ」

17日には、渋谷らくごに行って参りました。会場、すごい人だったなあ。太福さんが「佐渡に行ってきました物語」をやることにしたのは、大人気の神田松之丞さんが前の回で、裏口ですれ違ったことがきっかけだったそうなのだが、その超満員の回が、かなり押して終わったようで、開演を待つたくさんのお客さんと、帰ろうとするお客さんで、出入口が大混雑していた。
かく言う僕は、早めに渋谷に着いて、いつものラーメン屋さんでとんこつ醤油ラーメンとタダライスを食べて、ああ、美味しいけれど月に一遍が丁度良いなあなどと思いながら一服、それでも30分前には受付に赴いて、チケットを切ってもらって、階段の踊り場でゆっくりしていたから、困ることはなかったのだけれど。

昇々さんは、中学生マインド的なものが炸裂する新作でらしさが溢れていたし、太福さんは、ポッドキャストで聞いていたネタが生で聞けて嬉しかったプラス、たった三年間で変わってしまった、あの人との状況が織り込まれていて最高だったし、馬石師匠については、言葉では容易に語ることのできないすごみがあって、大声でも大げさでもないのに、静かに圧倒されていた。
特に印象に残ったのは、これまで見たことのなかった兼好師匠だった。渋谷らくごは二回目だという。上手いなあって思う人や、渋みや軽さを持っているなあって思う人はいるけど、そのすべてを兼ね備えているように感じたのは初めてだった。何度も聞いたはずの「天災」なのに、新鮮だった。

涼しいんだか、蒸し暑いんだか分からない帰りの、山手線は満員だった。高校生と思しき女の子が前に立っていて、手に持ったスマートフォンの画面が目に入った。LINEをしているようだった。いけないことだと思って、離そうとした目をくぎ付けにしたのは、彼女の指だった。
スマートフォンを両手で持って、二本の親指でフリック入力をしていく速度に驚かされる。画面が覗けない位置から、彼女の指の動きを見たら、ゲームで遊んでいると勘違いしてしまっただろう。その速さは、文章を考えるスピードを超えているとしか思えない。人間は、状況に合わせて進化する。一生懸命タッチタイピングを覚えた人々を、子どもの頃からフリック入力に親しんできた人が置いていく。内容は分からなかったが、高速で言葉を生み出せるという条件を活かすかのように、長くても数行の文章を、数秒の内に数個送信すると、相手からも即レスで数行が数個きて、というやり取りを繰り返しているようだ。あれだけ言葉があれば、それだけで充分なのだろう、スタンプは使っていない。新しいコミュニケーションの形を見た、という気がした。

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Posted by 後藤