手に泥
先日買った新しい靴。土曜日に初めて一日中履いた靴。履いていることを忘れるほどに、ずっと前から履きなれているかのように、まったく違和感がなかった靴。無意識は意識することができないから、履いているときには分からなかったが、買い物は上手くいったみたいだ。
もう一つ、僕が買い物上手であることを表すエピソードがある。黒いサンダルだ。100円ショップで買ったメッシュの中敷きのおかげで、僕の裸足とサイズがピッタリ合った。湿度の高い遊歩道の空気は、とてもねっとりしている。ときどき吹く風を、足の甲で感じる気持ち良さは序の口で、大型スーパーの自動ドアを通ったとき、僕は痺れる。そこにあったのは、いつものイオンではなかった。まるで別世界だ、それほどの快適さだった。
僕たちはやらないから知らないし、大したことがないに決まっていると、「酸っぱい葡萄」のように高を括っているが、日常のなかの実践は、驚くほどの効果をもたらすことがある。現に僕は、スマートフォンの通信量を1GB以内(22日の時点で、0.3GB利用)に抑えられるようになった。それまでは、平均で1.7GBほど利用していたというのに。どうやったか。それはただ、外を歩いているときなどのWi-Fiがつながらないところでは、見なくていいツイッターやしなくていいグーグル検索を控え、家にいるときは、出来る限りWi-Fiにつないでからスマホを使うようにしただけだ。
そんなことより、僕が6月18日の日記として書いた問題作「分離させる方法」の話をしたい。僕の才能を、世界でただ一人認めている僕は、ときたま日記を読み返すのだが、これには流石に驚いた。ちょっとタピオカについて描写してみたいとか、「バンクシーを崇めるよりバンクシーになるべきだ」って言いたいとか、変な名前の宇宙人が面白い(最後だけ偉人の名前なの超面白い)という思い付きを、全部つなげて文章にしてみるという意図は、辛うじて分からないでもないが、他に書くことなかったのかな。あと、「部屋のなかには、等身大のマジンガーZのプラモデルが置かれていた」ってなんでマジンガーZなのか……ああ、どんだけ天井高いんだっていうネタか。
たぶん、心を病んでいたんだ。日記の良いところは、自分が弱っていた時期を、完璧に把握できるところだ。あなたも、書いてみてはいかがか。
なんて乱暴なんだ。投票の後に、せっつかれている疲れが心臓の裏にあった。だから、あのメーカーの分からない自販機で、100円の飲み物を買ったんだ。「北海道夕張メロンのソーダ」が涙出るほどおいしそうで。暮れていく日は、厚い雲の向こうで、ベンチに腰掛けたら、みんなも腰掛けたらどうって思う。だけど、見えないほど細い糸で引っ張られているみたい、人々は脇目も振らないで行く。新しいペットボトルを開けるときに、まだドキドキできている自分。まだ大丈夫だろう。一口飲んで、本当に夕張メロンみたいな味がして、視界に色が付いた。やっぱり僕は、買い物がとても上手だ。
ディスカッション
コメント一覧
まだ、コメントがありません