段破
大きな音がしたから振り返った。何の変哲もない街があり、音の出処が脳内だと知った。
細胞分裂のことを考えながら、私は座っていた。少しずつ形成されていった私について、少しずつ大きくなっていった私について、物心がついてからの私について。思い出は枯れた井戸だった。目を凝らしても、何も見えなかった。無から生まれて、無に返っていく無だった。夜のように暗かった。水を流して部屋に戻り、そのまま横になった。その闇に目を覚まして、重たい空気を吸い込んでいた。かろうじて呼吸をしていた。苦しみに抗って、不安を和らげる薬を飲む気力さえなかった。主観的な時間は、ゴムのように伸びていた。死んだことはないが、死ぬ必要もないだろうと思った。私は、すでに地獄を生きていた。
肉体も精神も、段階的に破壊されていくのが人生だと悟り、意識の目眩で駅前のベンチに座り込んだ。私の中の私に、ありとあらゆる汚い言葉で罵倒されていた。その胸の痛みは、次第に呪いへと転化していった。誰も私の内心を知らないということだけが救いだった。歯を食いしばって、頭にしまっておけばよかったからだ。
とにかく今は、気丈にしていなければならない。ご存知の通りこの世界は、不条理が理(ことわり)なのだから。外面よりも本当の私の方が良い人間である私を、弱い人間は、理解できないのかもしれないと思った。私は、高潔な私を認めた。生き続けると決めた理由は、それだけしかなかった。それだけが命綱だった。
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