小説練習「文集、通話」#2

ブログ「いらけれ」

 予断なしに卒業アルバムを開くと彼女の笑顔があって、ドキッとした自分が不甲斐ない。もう十年も前のことなのだから、「かわいい」などと思ってはいけないのに。それなのに、別れ話を切り出された電話のときの、この椅子から見えた高校サッカー選手権の決勝の試合が、記憶の取り出せる位置にあって卑しい。あれは間違いなく2010年のことだ、でも調べてみると、優勝を見届けたはずの広島皆実高校が選手権を制覇したのは2009年1月12日だとWikipediaに書いてある……どこで、なにがずれた?

 人生のどこでなにがどうずれたのか、考え始めて終わらなくなり、風呂に入っている私がのぼせる。しかし、さっきまで読んでいた文集のことを思い出してしまう。およそ、のちに物書きになるとは思えない男の文章のことを。

ブログ「いらけれ」

Posted by 後藤