小説練習「通話」#1
いつでも電話できるテクノロジーをポケットに入れたのは、僕について言えば高校生になったその瞬間で、まだガラケーという言葉がなかったのは、スマホの発明を世界が待っていたからだ。初めて持ったケータイは紺に近い深い青で、少しだけキラキラするような塗装がされていて、折りたたみ式で、液晶の裏側のボディの真ん中に大きなレンズが付いている。カメラを使うことはほとんどなかったから、いくつものケータイを経由して、現在のスマホのフォルダーの深層に残っている校舎で撮られた画像はたったの一枚で、久々に思い出したけれど、校舎の二階には自動販売機が設置されていて、その前には小さな丸テーブルがあって、男子二人が肘をつき、組み合った手を男性教師の両手が包み込んでいる。
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