大層詩的
「秋葉原を離れた」と言っても、自らの足で歩いていったわけではない。がたんがたんと揺れている、というほどは揺れていない山手線に座って、本を読んでいた。自己正当化のために、間違いを繰り返し続ける人間という存在について考えた時、車窓からは乱立するビルが見えていた。
120分予定の座談会は、珍しく、本当に120分まで続いた。和やかな会話ではあったが、やはり疲れた。その翌日には、新宿での会場調査に赴いた。30分の予定が20分で終わった。火曜日には、個別インタビューを受けた。こちらも、90分予定が75分で終わった。場所は、新宿から京王新線に乗り換えて一駅のところだった。乗り換えで迷いに迷い、とても焦った(余裕を持って出かけていたので、10分前には到着したけれど)。京王新線の新宿駅は新宿ではないと思ったし、新宿と名乗るべきではないと思った。交通費はかかったが、トータルで1万5千円ぐらいにはなった。頑張った甲斐はあった、と正当化したい私だ。
目黒駅で東急目黒線に乗り、田園調布駅で降りた。「田園調布に家が建つ」という往年のフレーズを思い浮かべながら、地上へ出るエスカレーターに乗っていたら、軽やかなピアノの音色が聞こえてきた。上がり切ると、設置された「駅ピアノ」で一曲弾き終わったお兄さんが拍手を受けていた。初めて来たが……田園調布は流石だな、と思った。
時間を潰そうにも、駅の周りにはファミレス一つなかった。大体、ずっとおしゃれだった。本屋もスーパーも。スーパーには、見たことのない外国のお菓子がたくさん並んでいた。選択肢の多さに、余裕が表れていた。スーパーの横には、サーティワンがあって、いやいや俺に日高屋をよこせ、と思った(駅の反対側にはあったようだが)。駅前にはケンタッキーがあったので、そこに入ればよかった。少し散策を、なんて考えたのが間違いだった。寒い日だった。諦めて、自由が丘駅の方面へと向かった。引き返せばよかったのに。
自由が丘も初めてだった。人の多さに驚いた。こんな時間に、皆は何を目的としているのだろうか。ファミレスやらハンバーガーチェーンはあったものの、丁度夕方に差し掛かっていたこともあって、どの店も混んでいた。結局、合計で2時間近く外にいただろうか。寒い日だった。駅から微妙に離れた場所にあるフレッシュネスバーガーで、僕は観念した。二階の大きな窓にくっついている細長いテーブル席に座った。隣の人との距離が近くて落ち着かなかったけれど、それは問題にならなかった。すでに、ゆっくりする時間がなくなっていたからだ。
ディスカッション
コメント一覧
まだ、コメントがありません