感想-1 「真実」をめぐる物語として
伝えたい事が
そりゃ僕にだって あるんだ
ただ笑ってるけれど
奥田民生 『ひとり股旅スペシャル@嚴島神社 CUSTOM』
なぜ奥田民生「CUSTOM」から始まったのか。そのことについて、今から書いていこうと思う。寄り道もするだろうけれど、いつかはここに帰ってこようと思う。
『コミックソングがJ-POPを作った 軽薄の音楽史』を読んでいた。この本の刊行記念トークイベントに行くからには、読み終えておくべきだろうと思ったからだ。そうしたら読めた。自分に圧をかけるのは大事だなって思った。
とはいえ結構時間がかかったのは、知らない人物や楽曲について一々検索していたからだ。知らないことを知る、というのは端的に素敵である。デビューしたばかりの美空ひばりの映像も、検索して見て、そのすごさを思い知るのも、良いことだろう。
一番驚いたのは、ちあきなおみ「夜へ急ぐ人」の映像だった。スマートフォンの画面で見ると、なんか本当に恐ろしくて、呪いのビデオと言ったら、そのように広まりそうだなと思った。しかし、そのような力強さで表現されたシリアスな狂気が、後に、笑いという形で捉え直され、利用されてしまったという事実が面白い。
つまり、そういうところが面白いと、本を読みながら僕は思った。(明日の日記にちゃんと書くはずの)トーク内でも話題になっていたように、「アーティストの二万字インタビュー」のようなものが、音楽に付随する物語として盛んに語られてきたけれど、そのような真面目さとはまったく別のところで、「軽薄」に音楽が使われ、口ずさまれ、広がってきた歴史。
もちろん「コミックソング」として、新しいリズムが取り入れられてきたのは、一方では、単なる商売だっただろう。新奇なものは面白い、そちらの方が人目を引く、というような。しかし、そういった「軽薄」な曲のいくつかが人々に受け入れられ、ぞんざいな言い方をすれば売れ、今でも残ってるということを目の当たりにすれば、音楽というもの、それ自体の持つ力を考えなければならなくなるはずだ。
聞いた誰かの口を、体を踊らせてしまうような豊かさ。あるいは、言葉にしたくないけれど伝えたいことが、あやふやなハミングで届いてしまうような異常さ。
僕が、本を読み終えたときに思い浮かべた曲が「CUSTOM」だった。この曲を知ったのは、東日本大震災が起きたすぐ後、マキタスポーツがラジオでカバーしていたからだった。何も言葉にできなかった、言葉が何もできなかったあの時、「アメリカ ジャマイカ……」という原曲の歌詞は、東北の土地の名に変えられて、そして最後には、「届いてる?」と歌われていた。あの時……音楽だけは何かをしていた、と思う。届いていたのだと。
感想は書ききれない。一割も書いていない。だからこれは、本の感想ではない。まあ、考えたことは、思ったことは、この先の日記で少しずつ書けばよい。とにかく、『文化系トークラジオLife』や『東京ポッド許可局』、『マキタスポーツラジオはたらくおじさん』(!)を聞いてきた僕は、二人のトークも聞きに行くべきだと思ったから、いくつかの言葉を抱えて、僕は外に出た。
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