2019521-1

ブログ「いらけれ」

甘かった時間は終わった。すべてが終わったあとにだけ、時間は、全体として振り返ることができる。

電車だ。乗り込んだそれが各駅停車であり、次の駅で急行に乗り換えなければならないことを忘れ、空いている席に座り込んだ僕の、リュックサックに詰め込まれた本は二冊。急行でも座ることができたので、取り出して読む。これは、書いている今では、明日までに図書館へと返却しなければならないもので、まだ読み切っていない。

まずは新宿である。西武新宿駅から新宿駅を通り過ぎて右へ、指定されたビルに向かった僕は、エレベーターを降りた扉の前で、他の被験者とともに開始時刻を待った。実験はつつがなく終わり、謝礼をカバンに入れた僕は、小雨の新宿へと飛び出した、というほどの勢いはなかった。その時はまだ、どこへ向かうか迷っていたからね。

新宿から渋谷までってのは、歩けば1時間ぐらいらしいと、事前にグーグルマップで調べていたから、そうそう、僕は20時開演の「渋谷らくご」のチケットを取っていたので、渋谷にはいかなければならなかったし、15時の今、そちらへ向かえば、会場近くのカフェかどこかで、本をじっくり読むことができるだろう。電車代だってかからないのだ。

熱心な読者諸氏ならばご存じだろうが、僕は大馬鹿野郎なのである。だから?秋葉原へ向かった。プロレスグッズショップの「バックドロップ」が目的地だ。1時間半で着くとグーグルマップが言うから(実際には2時間以上かかった)。「すっぴん!」の月曜日とか、「東京ポッド許可局」を聞いていた。歩き始めは余裕で、都心に暮らしているであろう人々を横目に、思考を巡らせていた。

ミャンマー料理店に次いで、チベット料理店を見た。都会というのは、本当にすごいものである。高架下に、バイクの上で器用に眠る人も見た。「これぞ多様性」というような現実。そうだ市ヶ谷駅は、前の会社の取引先が近くにあって、雑用のために何度か降りた駅だ。外濠は素晴らしい。視界が開けた橋の上で、ここから飛び込んだら、誰か助けてくれるだろうかと考えた。

都市を、ここまで移動したことはなかった。東村山市とは、言うまでもないことだが、やはり違う。東村山駅から1時間歩いたところで、世界観はさほど変わらないだろう。どこまでも地続きで、微妙な変化があるだけだ。
都市は細切れなのだ。住宅街とビジネス街が隣り合っており、たったの数十メートルで、子ども連れのお母さんから、背広組のおじさんに、そこに居る人々が変わる。大学があれば、それに合った店が並ぶ道があり、左側に美しい自然が現れたかと思えば、右側は巨大な道路で車が連なっている。秋葉原に近づくと、あるポイントから、本当に突然、それまでとは違った広告が、ビルに描かれている様を目にすることとなる。べたっとした郊外と、機能ごとに、微細に分節化した都市は、まるで違う国のようだが、一本の線路でつながれていることが不思議だ。

ブログ「いらけれ」

Posted by 後藤