スパニッシュ・フライ

ブログ「いらけれ」

「カメラを止めるな!」を見た約15時間後、まだその余韻の残るなかで、「ミッション:インポッシブル/フォールアウト」を友人に誘われて見てきた。約2時間半。帰りの電車と飯食いながらのツッコミ大会、1時間半。いや、すごい映画だったですよ。だって二人で思い返しても、敵側が重要なアイテムを手に入れた大事なシークエンスが思い出せないんだから。っていうか多分、大事なシークエンスがないんだから。2時間半あるのに。
終演後のトイレで、若いにーちゃんが「難しくて分かんない」って言ってたけど、敵味方(また、内通者や裏切り者)が入り乱れるその内容は、確かに一回見ただけで理解するのは難しく、しかし、映画の見どころは大きなアクションシーンなわけで、そのミスマッチ感はなんとかしたほうがいいかなと思う、シリーズとして。
見どころであるアクションはすごくて、それは否定しようのない、この映画の美点だ。特にクライマックスでは、4回くらい「死んだだろ」って思った。トム・クルーズは死にたがりなのだろうか。
その他、細かいツッコミどころを上げていったらキリがないくらい(特にウォーカー問題な!)だけど、もしこれから見られる方がいるとしたら、「バカになって楽しむべきだ」とアドバイスしたい。気にしたらいけない。疑問を持ってはいけない。
とにかく、最初の格闘シーンで、相手と組みあい後ろにくるっと回って床にたたきつけるあの技が、「スパニッシュ・フライ」という名前だ、ということだけ覚えて帰ってください。

映画館でさ、クスッと来る笑いどころで、一人声を上げて笑うおじさんがいてさ、友達とその話にもなったな。全員が同じところで、同じレベルで笑うのも全体主義的で怖いんだけど、落語界でもそうだけど、一人の変な笑いで空気が壊れるっていう面もあるから難しいよね。でも、やっぱり唯我独尊はやめて欲しいって思っちゃうな。
最後の感動シーンで、そのおじさんはすすり泣いていた。他には誰も泣いていなかった。その唯我独尊っぷりにギョッとした。

ミッション:インポッシブルにツッコんでいた中華料理屋で、初めてドラゴンハイボールなぞ飲み、美味しい麻婆豆腐を食べ、楽しく解散して帰ってきた部屋が、その中華料理屋と全く同じ匂いでびっくりした。誰かが、僕の知らない内に、この部屋で中華料理屋を開いているのかもしれない。

死ぬまでにもう少しマシな世界を見たい。醜悪な言説を垂れ流す人々に足りないのは、間違いなく他人に対する想像力だ。それは間違いないが、「だから小説(映画、アニメ、ゲーム……)にたくさん触れるべき」っていうのも「おたく」の自己弁護だと、そう感じてしまう。そういったものに触れながら、ヘイトしたり差別したりする人々も、いっぱい見てきたから。
答えなんてないんだけど、戦い方を考えなければならない。

ブログ「いらけれ」

Posted by 後藤