幸いならざる者たち

ブログ「いらけれ」

夜。公園。月の光。8月の1週間が過ぎた。やっと夏らしくなった空気をマスク越しに吸い込んで、吐き出して、ようやく声になる。

すっかり暗くなって、この場所には僕たちしかいないのに、予想に反して騒々しい。蝉が鳴き止んだ後に鳴く虫がいること。微風に木立が揺さぶられる音の大きさ。木の影も揺れている。夜のなかの黒にも濃淡があることを、僕たちは同時に発見する。街灯のない向こう側よりも、夜空の方が白くて、そこを飛ぶ鳥の方が黒い。あったことのない人がたくさん生活しているから、マンションの明かりがある。生活音は聞こえない。

聞こえていないかもしれないと思ったから、声が少し大きくなった。僕は、この時の会話を書くことができない。感情だけが流れていた。僕のことを悪く言うのはなぜだろうと考えていた。傷つかないと思っているからだろうか。それとも、嫌われてもいいと考えているからだろうか。むしろ、嫌われたいと思っているのだろうか。それならば、どうしてここに来たのだろう……なにも分からなかったけれど、それで良かった。

嘘ならば、いくらでも本物らしく言えるのに、本当の気持ちを言葉にしたら、嘘みたいだった。だから人間は分かり合えないのだと知った。それはすでに決められていたことで、逆らえない運命だった。分かり合えない不幸は、しかし、分け合うことはできた。「誰と不幸になるか」という問題を前に、僕たちはお互いを選んだ。

ブログ「いらけれ」

Posted by 後藤