[今日がリタイアしていく東京]
そばがらの枕に耳を当てて、微動する頭によって生まれるサウンドを聞いていた。枕を濡らした夜、なんてあった?枕に関する思い出すらないようだ、この引き出しは空っぽだ。
引き出しという言葉が出てきた背景を語ろう。すぐに終わるから、そこで待ってろ。何の因果か、それは合法ではなかった。だから語らない。ヒントを与えるなら自由形の迷宮、お子様では見れないやつだ(これだけで、"合法"との因果が何か分かったら大したものだ)。
放送が開始されてからしばらくは、毎週のように見ていた。いつの間にか見なくなった。大きな理由やきっかけはなかった。PCのモニターばかりを見るようになったからかもしれない。ヒップホップは好きだから、とは口が裂けても言えないほどの浅学だが、機械におすすめされた映像のなかで、字幕付きで流れていく言葉たちに射抜かれた。ヤラれた。
小説を書きながら、神様からの啓示を受けたのか、世界が光っていた。韻の固い音源を聞きながら、なるほど、散文ではなく"韻"文にすればいいのかと分かった。直接的なサンプリングはしなかったけれど、遊び心でワードを引用したりした。もちろん小説という体を取っている文章だから、「(肉弾戦でテクニック出せん奴は)脱落だ、辛くても立つラクダ」みたいに、あまりにも高度なテクニックは盛り込まない(いや、ただただ普通に書けない)。
黙読が広まったのは、意外に最近だと聞いたことがある。私がこうして書いている今、私の頭の中で匿名の誰かが書かれる前に読んでいる声が、読み手の中で同じように鳴り響いた時に、気持ち良い文章を書けばいいのだ(小説に速読術を使う奴は散れ、そして、タイトルの「今日がリタイアしていく東京」は、そうした観点から小説内に置かれた一文だ)。
🎃べケット『モロイ』宇野邦一訳
🤡私は耳を傾ける、すると均衡を失って凝固した世界が私に指図するのが聞こえる。光はかすか、静か、他には何もない。なんとか見えるほどには明るい。わかるだろう。光も凍っている。ささやきが聞こえる。重荷にひしがれたようにみんな曲がって撓んでいると言う。 pic.twitter.com/sN3aleIxMZ— hosakakazushi.official (@HosakakazushiO) January 11, 2020
この思い付きの正しさを確信したのは、保坂和志のこのツイート(というか、宇野邦一訳のべケット『モロイ』の引用)を読んだ時だった。「かすか、静か」のところなんて分かりやすいが、例えば後半の「凍っている(こおってる)」と「聞こえる(きこえる)」という部分も韻として機能し、心地良いリズムを生み出している(あと、突然入る「わかるだろう」がフリースタイルっぽい?知らねえ)。
とりあえず、この閃きのおかげで小説が書けて良かった。今日はそんな感じ。
越冬 / ICE BAHN [Track by TWIN-B]
お前が希望とか夢
捨てた時点で死亡と書くぜ
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