年末雑記#2

ブログ「いらけれ」

『早稲田文学増刊号 「笑い」はどこから来るのか?』を買いに行ったんです。ツイッターで、僕の好きな人たちが寄稿したってつぶやいていたので、興味を持ったんです。そしたら29日は、発売前日だったんです。とっくに発売されてるものだと思い込んで、探し回ってしまったんです。一つ隣の駅の、大きめの本屋まで歩いてしまったんです。そこでやっと公式のホームページを見て、「それじゃあ」と次の日も歩いて行ったんです。でも、なかったんです。僕は、東村山に住んでいたことを忘れていたんです。
すぐには置かれないとしても、いつかは手に入るかもしれません。それに、ネットで買ってもよかったんです。でも、年末年始のまとまった時間で読みたかったから、今すぐに欲しかったんです。だからといって、国分寺駅まで歩くのはおかしいんです。家から6キロあるから、行き帰りだけで3時間以上かかってしまうんです。電車賃をケチりたかったんです。幸か不幸か、『東京ポッド許可局』の最新回の録音や『文化系トークラジオ Life』の大忘年会の配信があったので、「歩いてる間、それ聞いてたらいいじゃん!」って思ってしまったんです。僕は馬鹿なんです。

僕にとって歩行は立派なコンテンツだ。移動すれば新たな発見があり、激しくない運動はストレス解消につながり、その間にラジオを聞くことで面白いものの補給もできる。とはいえ往復12キロ、計3時間は長かった。やめておけばよかった。疲れた。

午後1時の温かな日差しに守られながら、僕は快調に歩き出した。自転車道に並行している植木たちの一つから、蔓のようなものを引きちぎっているおばあさんや、羽織っているコートの間からピンクのエプロンをのぞかせているバイクに乗ったおばさん、買い物袋でいっぱいになっている自転車の籠の前面に正月飾りを載せているため、何かおめでたい感じになっているおじいさんなどを見た。世界から落ち着きが失われているのは、慌てていても許される日だからだろうか。

この道は、東村山にハローワークが出来る前、小平のハローワークに通わなければいけなかった頃に、よく歩いていた。道沿いにはスタンド部分が上に大きく張り出している屋外プールがあって、その下に無数の自転車があったのは数年前までで、今は進入禁止の柵に駐輪禁止の張り紙がされている。小平のハローワークで、辞めてしまった編集プロダクションの求人を見つけたのではなかったか。すべては、この落ち葉のように、終わったことだ。

それでも今年は、最初から最後まで、文章を書くこと(がメイン。データを調べたり、取材したり、それだけではない仕事もたくさんあったけれど)を仕事にできた一年だったわけで、そこまで悪くない状況にいる僕にとって、小平のハローワークの先は未知の世界だ。これまでにも何度か、国分寺駅から歩いて帰ったことはあったが、当時のグーグルマップは別のルートを示していた。知らない景色に胸が躍る。きょろきょろとしている僕に、とても強い風がぶつかった。

ブログ「いらけれ」

Posted by 後藤