バッチリ
あなたには、何か一つでも誇れるものがあるだろうか。僕は、ライターだと言っているのだから、1時間作文をさせるのならば、時給を払ってほしいと思った。あの面白コラムは仕事だ。
じゃあ例えばよ?募集されていたのが体力のいる仕事だったとしてよ?スタミナを図る試験として現場に穴を掘らせるんだったら、お金を払わないといけない気がしない?頭脳労働って馬鹿にされてるんかなあ。
そもそも、気軽に面接に呼びやがる(そして落としやがる)けれども、移動するのだってタダじゃないんだよ。もちろん、履歴書を郵送するのだってそうだ。それなのに、不快な思いをすることばかりなのだから、マジでやってられない。一度だけ、交通費として千円を手渡してくれた企業があったけれども、その時は本当に良い印象が残ったものだ。遠くに住んでいる応募者もいるだろうし、観光の足として使う輩が出てくるかもしれないから、全額を出すのは難しいとしても、僕が社長になったら、面接に来た人へ交通費を出したい。社長になんて、ならないけどな!
そんなこんなで、すっかり夕方になっていた電車が始発だったから座ってた。高いところを走ってた。体のしんどさと、頭のしんどさと、心のしんどさが良い勝負を繰り広げてた。目に映るものは、ランダム再生された泉まくら「かげろう」のなかで、僕と無関係な人々の顔と、流れ去っていく街だった。
すげーたくさんの人やモノ
否応なし飛び込んでくる世界
でも、だいたい無関係な人なんていないんだよ。これまで「私」と関わりのない、性別も年齢も階層も違うような誰かと「私」は、まったくの無関係であるという意味で、強い関係を結んでいると言えるのだよ。共感も、感情移入もできない「誰か」としての新たな関係が、そこに立ち上がっているのだよ。この程度のことが分からない人は、もう少し勉強してから話すようにした方がいいのではないだろうか。
つうか、「無関係な人間を巻き込むな」という人は、「(過去に「暴力を振るわれた」とか、「恋人を奪われた」という)関係があったら、殺っていい」とでも考えてるのか?必殺仕事人か?中村主水イズムか?実際、そんな風に考えてそうで嫌だな。そう考えているから、認めると殺られても文句の言えない歴史上の悪行を、必死になって見ないことにしているのかもしれないと思った。
これは本当に、僕が電車に乗っている間に考えていたことだ。僕は疲れていたのだ。泉まくらだなと思って、絞ってランダム再生し直していた。乗り換えのホームで前を見ていたら、「さよなら、青春」がかかった。
信号を無視して
目を閉じたまま飛び込んだ
なぜ、今の今まで電車に飛び込まなかったのか。これまでの人生にたくさん、そして今も、チャンスとタイミングはあった。僕は、僕をここに引き留めているものについて、考えようと思った。
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