映画『あん』感想
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映画『あん』公式サイト
気軽な感想です。先に言います、オススメです!
新所沢レッツシネパーク水曜日朝一の回で観てきました。年齢層はかなり高め。そして、かなり入っていました。始まる前は騒がしく心配だったのですが、リアクションがよく笑いも起きていて、いい雰囲気でした。映画館で観てほしい映画です。
まずは、自分と絡めた感想を。実は、この映画のロケ地は家の近所でして、それもあって観に行ったんですね。
わたしの住む東村山という場所は微妙な街です。都会ではない。田舎でもない。栄えているわけではないが、寂れきっているというわけでもない。郊外的な景色もあるけれど、それだけではない。そんな街です。そして、この映画で重要なハンセン病(劇中ではらい病、らいと呼称されることが多い)に深いつながりのある場所です。
この映画を観て驚いたのは、東村山という街のチャームと、その見せ方の手腕です。
映画の中に印象的な桜並木が出てきますが、あそこには、わたしも春によく行きます。ですが、その見慣れた場所が何倍も魅力的に見える。生で見るより良い風景に感じるのがすごいなぁと。
また、街中にはもっと商業的でぎらぎらしたお店や看板もあります。過剰にきれいに整備された施設もあります。しかし、そうしたものは極力排除されています。背景に映り込むとしても、ピントがずらされ、ぼやかしてあります。それによって、物語を邪魔するノイズに気を取られることなく、没入することができました。
良い場所で撮影されているなと思いますし、画作りも素晴らしいです。環境音が多分に取り込まれた日常描写にも、ぐっときます。
しかし、それよりも何よりも語りたいのは樹木希林さんのチャームです!!
ああいうおばあちゃんいるよなァ。かわいい!!
今さら語るまでもない大女優ですが、本当に演技がいい。前半の「かわいい」があるからこそ、後半の展開がより胸に迫るものになっていますよね。
映画として気になる部分もあります。悪者の描き方とか。悪者が、物語に都合のいい悪者に感じました。ですが、この悪者との対峙は、物語にとって重要ではない部分として映画が進められているので、物語を推進させつつテンポを崩さないための描き方なのだ、という擁護ができそうです。
もう一つ、ハンセン病についての偏見の部分。もちろん、偏見が今でも根強く残っているのは否定しません。しかし、隔離施設のあった、いまは療養所のある周辺(とくに東村山)には、そうした偏見を持った人は少ないと思います(わたし自身、小学生時代からハンセン病についての知識がありました)。
なので、あの描写には違和感がありました。舞台設定がもっと昔か、ハンセン病に関わりのない土地であったなら納得できるのですが……。しかし、これはそれこそ東村山で生まれ育ったからかもしれません。ハンセン病について、あるいはその歴史について知らない方は、気にならない部分かと思います。
しかし、『あん』が素晴らしいのは間違いないです。
千太郎、徳江さん、ワカナちゃんの境遇が、かなしみが重なり合う。「かごの中の鳥」などに表象される、根源的なテーマに貫かれたストーリー。そうした物語から離れたところで、花や鳥や風や月が、映像的、音響的に雄弁に物語るもの。
感動的で、心を動かされる映画です。未見の方はぜひ。
気軽な感想のつもりが長くなってしましました……。
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