ブログ「いらけれ」

真夜中まで起きて、明日というか今日、返却しなければならない本を読む。絶対に間に合わなそうだと思いながら。webサカで監督転生を目論んで(監督転生とは:「卑劣な男」)、3時50分に監督を変えて、また本を読み始めたら寝落ちして、起きたら朝8時。「しくじった、馬鹿した」と思ったけど、他のチームに監督を取られてなくてよかった。本はまだ半分も読み終わっていない。

一日の初めには大抵、ブログのアクセス数をチェックする。その時、アクセスがゼロのことはよくあって、それは今日もそうで、あなたは「そんなもんだろう」と思うかもしれないけれど、やっぱりガッカリする。仕事で手を抜いているわけではないけれど、絶対にこちらの方が面白いはずなのに、あちらは金になって、こちらはアクセスがゼロだ。本は6割くらいのところまで来た。こういう人文書に付いた注、参考資料の多さを見てしまうと、僕の文章なんて読まないで、もちろんまとめサイトなんて読まないで、本を読んでくれという気持ちになる。

読んでいたのは『シャーデンフロイデ』という本で、内容がビンビンくる。翻訳が読みにくいところもあるけど、扱われているテーマは完全に興味のど真ん中。今の時代のことを考えると同時に、仕事で誰かのシャーデンフロイデを呼び起こしてしまっているなと反省もするし、自分の過去の恥ずべき感情と行動を思い出すこともあった。本にも書かれているように、キレイな人間なんていないけど、キレイになろうとしない人間は嫌だから(しかし、「公正」、「正義」といった感情もシャーデンフロイデと分かち難く結びついているのだが)。それでノッてきて、本を読み切ってしまう。

台風の大雨が来る前に家を出る。さっきまで止んでいたけど、小雨。録音した「粋な夜電波」を聞きながら歩く。いい調子だ。

図書館で1時間近く悩んでいる間に、ひどい雨になっていて、屋根を叩く音がすごい。目的の何かを借りるのではなく、何を借りたいのかというところから考えている内に、まず自分のことが分からなくなる。あの困惑がたまらない。自分が、何に興味があって、何を知りたくて、何を知るべきなのか。自分探しは図書館でしろ。

アーレントのことを勉強したかったので、とりあえず仲正昌樹の『悪と全体主義―ハンナ・アーレントから考える』と、船木亨『現代思想史入門』に決める。船木は知らない著者だから、一回調べてしまったよ(調べた結果、「ツイッターで千葉雅也が名前を出したことがあるからいいか」って、それもどうなんだ)。はずれを引きたくないというか、自分じゃ正誤が分からないから外側に頼りたいというか。こういうのがよくないのは分かってるんだがなあ。借用の手続きを終え、帰る頃には雨は弱まっていた。

帰り道には、僕の中にある黄金について考えていた。どれだけくだらないことをやらされていても、どれほどつまらないことをやらされていても、僕が保っていられるのは、僕の中に黄金があるからだ。絵にできないのが惜しいほど、はっきりと見えている黄金の館。いつだって僕の帰るべき場所は脳内にある。いつだってあそこに帰れるんだ。あそこにいれば気分がいいんだ。霧雨のような雨だったけど、普段は水量のほとんどない川には、それなりの水が流れ込んでいた。僕が、この川に飛びこまないでいられるのは、なによりもあの黄金のおかげだ。

家に帰って、風呂に入って、憤っているわけではないけれど、小説家なら何を書いても出版されるのはいいなあって思った。もう、何かを書いて許されるのは、他の分野で何者かである人だけで、それは精神分析医でも、音楽家でも、お笑い芸人でもいいけど。僕が、ものを書くということだけでものを書く人、批評家やライターを尊敬しているのは、そういう後ろ盾なしに書いて、それで認められることのすごさが分かっているからだ。それを分かっていない人ばかりが、もの書きを過剰に馬鹿にする。分かれば馬鹿にできないからさ。でも、僕は小説家になって、何を書いても"エッセイ"とかいって、出版されたい。小説は別に、そんなに書きたくないけど。

ツイッターを見ていると、いろんなイベントや公演が中止になっていく。台風に備えて、電車が早めに運行を終了させるからだそうだ。家でぬくぬくしている僕が、シャーデンフロイデを覚えるかというと、それはどうも微妙だ。なぜなら、「シャーデンフロイデを覚える」っていうことを認めるのが人間には難しいから。それを否定しようとする心の動きがあるから。自分の感情すら、きちんと把握できないなんてね。

西武ライオンズが優勝したらしい。ヤフーニュースで知って、その瞬間は見たかったなって思った。

ついに豪雨となる。with超強風。イヤホンをしているのに、ノイズのように音が入ってくる。窓の外を見る。なんでこんなにも大雨って見ていられるのだろう。水の玉が道路で跳ねる。商店街の旗がちぎれそうだ。目が楽しい。ブログを書き始めたら2000字になってしまった。でも、書かなかったことの方が多い。