ブログ「いらけれ」

インフルエンザについて人間は、罹るまで自分だけは罹らないと信じているから、僕はそれを恐れているわけではなかった。花粉症の頃には欠かせないマスクの箱がずっと玄関に置かれていて、何となく取り出してひもを耳にかけた。口の周りが温かい程度ではどうにもならなかった。その日が飛び切り寒かったというわけではない。僕は出掛けた。ポイントサイトで申し込んだモニターに当選したから、モニター品のお菓子を買うために。
主にドラッグストアに置かれていると説明書きがあって、販売中のドラッグストアチェーンの名前が並んでいた。先頭に書かれていたのが家に一番近いドラッグストアだったから、余裕綽々で入口を抜けて、お菓子コーナーへと一目散に向かって、見つからなかったから棚の周りをぐるぐると三周したけれど無かった。
そこから旅が始まって八坂駅の方へ、いくつかのドラッグストアをのぞいて、ローソンにも置いてあるというから遠くまで歩いて、4種類味がある内の1種類、絶対に抹茶味は買うようにと指定がされていたのだが、ココア味とチーズ味しかなくて、次は東村山駅方面に、またいくつかのドラッグストアに入ってみるがやはり無くて、東村山駅近くのローソンにはチーズ味とメープル味しかなくて、とぼとぼと家に帰らない。見て見ぬふりできなかったのだ。ローソンにおける置き場所が、カロリーメイトや一本満足バーの近くだったことを。そういえば最初のドラッグストアでは、スナック菓子やチョコ菓子は見たけれど、そういった栄養補助食品の類は目にしていない……。
あった。1万8000歩、3時間をかけても見つからなかったお菓子が、家のすぐそばにあった。「青い鳥」みたいな話だ。ドラッグストアで栄養補助食品を買ったことがなかったから、お菓子があるのはお菓子のコーナーだけだろうと早合点してしまったのがいけなかった。僕はとても愚かな人間だと思った、そんなことは知っていた。

知らなくていいことまで知ってしまったと思う。知らないのに元気な人を見ると、知っている人である僕は不安に思う。知らないでいる人は、知らないことさえ知らないことさえ知らないのだろうから、余計にそう思う。でも、知らなくていいことは知らない方が幸せだと思う。この世に存在する、あらゆる苦しみとか。
そんなことより、『読書実録』が届いた。出掛ける前に数ページだけと読み始めたら、33ページ目まで止まらなかった。でもそれは、ベストセラーの「一気に読みました」という売り文句とは違う読まないでいられなさだ、次の文を呼び込む力は、普通は句点が置かれていそうなところに、読点が打ってあったりするからなのだろうか。ミステリーでもないのに、解けない謎を抱えて読んでいる。