ブログ「いらけれ」

そんなこんなで、予約してあるという居酒屋が開くまで、駅前の居酒屋に入った僕らは、再会を祝って乾杯した。それまで何も食べていなかった僕は、酔いが回るのを恐れて、一杯目はウーロン茶だったけど。

基本的には、長野県らしさのないものを食べ、さまざまな話をした。個人的な会話を明かすわけにはいかないから、内容を詳細に書くことはしないが、それまでに彼の書いたものを読んで、いわゆる美少女ゲーム的なものの知識を持っているようだったから、年代的に同じか、少し上を想像していたので、年下と聞いて驚いた。人生の先輩(冗談だよ!)として、驚いている場合ではないのだが、そういう仕事が決定的に苦手なのだ。出来ない後輩ポジションで甘えていたいのだ。それらしいことは何も出来なかったので、出来ないのに先輩という最悪の位置に収まった。

場所を移しても、同じような会話を続けていた。「千曲錦」を飲んで、やっと長野感を味わったといえるのだろうか、と考える間もなく酔った。酔いながら、将棋を指していた記憶と、かなり優勢になった記憶と、負けた記憶のピースがあるのだが、どうしてそうなったのだろうか。強い人の王様には謎の耐久力があり、指しながら、これだから将棋は嫌いだ……と、ぼやいていた気がする。そう言いながら、明日もう一局やろうと約束をしてしまう。将棋へのツンデレである。

対局中、隣の個室からビックリするほどネトウヨのテンプレみたいな会話が聞こえてきて、ドン引きしてしまう。前後の話からして、社会的な立場のありそうな人々だったけれど。それ、ネットで読んだことある奴……と思った。そうした人々は、なぜ他者の言葉を、どこかで読んだ論理を、そっくりそのままなぞることが出来るのだろうか。少し考えれば、あまりにも馬鹿馬鹿しいと気づくようなことも、誰かから拝借すれば言えてしまう。「その言葉は誰のもの?、本当にあなたの言葉?」という問いは、深めていくと面白そうだと考えてしまったから、負けたという言い訳をするつもりはないが。

締めのラーメン屋でカレーまで食べて、ラーメン屋なのにカレーが美味しいということの面白さを堪能している内に22時。チェックインの時間。お金を払って手渡される鍵。サービスでもらったホットミルクティーを飲みながら、狭いロビーで談話。『ヨーロッパ企画の暗い旅』が好きだという話の流れから、スマホで動画。次の講義まで時間がある時の大学生感。

彼がどう思ったかは知らないが、僕は勝手に、これは大丈夫だぞ、と思った。これは増えたぞ、俗に言う友だちが、とホテルで一人になった僕は思った。自販機で氷結を買い、階段を上り、自室の扉がやけに開けやすかったので、缶を取り忘れたことに気付き、急いで戻った。氷結はまだ、そこにあった。