ブログ「いらけれ」

ガソリンを入れた車は走り出す。ガタガタの道。エンジンがタイヤを回す。ハンバーガーを食べた男がアクセルを踏む。眠たい目をこすりながら。季節は春の桜吹雪が、視界が開けて丘の上から街が見える。屋根が並んでいる。私たちが過去を語り出すときのように、おずおずと雨が降り出して、鳥の形をした雲で月は見えなくなった。
停止の不可能性で世界は、一定のリズムを刻んでいる。面接のために女が扉を開けて、風が吹いて、カーペットから埃が舞った。そのことを、人間の眼では捉えることができないとしても、そのようにしてあった。これは事実だ。AがBになり、やがてCになる。すべてが変換されていく。キーボードに触っている指を動かしている脳を、電気信号が走った。
アルファベットがひらがなになって、漢字に変換されるまでの工程が、それ自体が縮図のようである。それだから、ただ、文字の後に文字が連なっているだけで、私は、心が動かされてしまう。マイルス・デイヴィスのトランペットを聞いている、私がそのように書くから、音楽が再生される。それがつまり、CがBになり、やがてAになるということなのだとしたら、まるで魔法だ。無から有が生み出されるのだから。

魔法は解けて、朝一番のスマートフォンは、僕でも電源が入る。未練を脳内から追い出して、すべてをリセットした。すべてをリセットしたい。返送用の封筒に住所と名前を書いて、本体を入れた。ポストに入れた。
一日で久しぶりという感じだ、外気は。ただ歩いて、散髪について考え、チェーンのヘアサロンの、一面のガラス窓に貼ってある目隠しの隙間を、覗き込む女を見た。それ以外に、特筆すべきことはなかった。
苦しみを見過ごすことができたとしても、苦しいことには変わりがない。七転八倒している自分を、もう一人の、のたうち回る自分が見ている。一切を捨ててしまう前に、穏やかな解決策を探している。生い茂る木々のせいで、大きな公園の内側から外側は見えなくて、少しだけ心が安らいだ。
帰ってきたら、グーグルアドセンスのPINコードが届いていた。やっとだ。二枚の紙を接着することによって、中味が見えないようになっていた。しかし、天下のグーグル様とは思えない、安っぽい作りで興味深い。興味深いことだらけだ、毎日。届いた数字を打ち込んで、無事に承認されたから、収益が8000円に到達すれば、金が振り込まれるという。ちなみに、現在の収益は1300円程度である……死ぬまで無理なんじゃねえかなあ、これ。