ブログ「いらけれ」

これはフィクションだから、とある出版社の面接を受けるために裏新宿へ(そんな土地はない)、「東京ポッド許可局」の焼肉イップス論を聞きながら、朝から電車に揺られて向かう。正解が分からないときに、自分で正解を探してカスタマイズしていく、それが楽しいというのと、自分が知らないのならば、詳しい誰かに任せればいいというのは、思想の違いだよなあと思いながら聞いていた。

とても寒い街を歩いて、面接の30分前には会社のビルに着いた。隣のコンビニに入ったりして、時間を潰した。そうこうしている内に直前になったので、緊張を抑えるために、聞くものを音楽に変える。いわゆる「applemusicランダム再生占い」をしてみたところ、一発目にかかったのがSufjan Stevens「No Man’s Land」だったのだけれど、これがどういう未来を示しているのかはよく分からなかった。

漢字のテストができなかった(もう手書きなんてできないよ……)のはしょうがないとしても、面接はひどいものだった。なんであんなに偉そうなのだろうか、そして名乗りもしなかったし。そうしてマナーを欠いていながら、一冊ぐらいは自社の本を読んでくるのが当たり前だろうとか、本当に意味不明だ。あと、徹夜があることと残業代がでないことを誇らしげに言うのもやめてほしい。それに見合う年俸は出るというけれど、実際の金額は教えてくれないし。「稼ぐだけならこの仕事を選ぶ必要はない」「出版はそういう情熱で支えられている業界」とか言うけど、だったらそんなものなくした方がいいんじゃないでしょうか。だって、「本を売る」というシステムが、商売として成り立っていないということじゃないですか。人が無理をして、誰かが損をして、なんとか生き長らえているだけなら馬鹿馬鹿しい。一方で、年俸がそれなりであることの説明として「最底辺の給料でこき使われているようでは良い本は作れない」とも言っていて、矛盾!ってなった。

もう社会が無理だという思いで、その辺りをぶらつく。大きな道路から一本入ると、意外と古い一軒家が残っていて楽しい。縦に塗りつぶされてしまった時間の層が、筋に残存しているようだった。ただ、その裏道の先でも新しいマンションの工事をしているようだったから、いつまでも残っているものではないのだろうなと思う。最寄りの駅から帰るのではなく、一駅歩いて帰ろうと思い、スマホで地図を見ていたら、車に轢かれそうになった(歩きスマホは危ないですね、やめましょう)。少しだけ、轢かれたかった。とにかく地球が嫌だった。僕はもう、宇宙に移住するしかない。