TWICEの世界進出について、他。

コラム「後藤の超批評」,批評,書き起こし,音楽,TWICE

ラジオ「とくにないよね」2017年12月12日#70「心振」から書き起こし

G=後藤
O=押川

G「そう今日、そうそう、それでね、今日なんだよ、「Heart Shaker」が発表されたじゃん?」
O「うん?」
G「踊ろう踊ろう、ちょっと「Heart Shaker」踊ってみよう?」

O「え、えーっとね」
G「ふ、ふふふん、ふふふん……(笑)、基本あのー、胸の前30センチから動かなかったけど、フリが」
O「そんなもんでしょう」
G「まあTWICEなんですけど。また新曲が発表されまして。一個言っとかなきゃいけないなと思うのが、やっぱ働かせすぎなんだよね」
O「そうでもないよ」
G「何を知ってるんだよ(笑)」
O「彼女たちの幸せはそれなんでね」
G「いや、でもさー……昔、一番忙しかったのは、「CHEER UP」って曲出した頃らしいんだけど。あのー、曲中に寝るっていうね。曲、始まる前まで暗かったりするじゃん?だから、半目開きだった、とか、その頃が大変すぎて。
あと、韓国の歌番組って最後なんか皆で集まって、舞台上に集合してサヨナラするんだよ。その時に、意味なくメンバー全員が急に号泣し始めちゃってね、大変すぎて、とか。
あと、メンバーにサナって子がいるじゃん?その子がバラエティ番組でいじられてたの。他のバラエティ番組に出てるときに、ひな壇で寝てるというか、半寝みたいになってて、「おい、寝てるじゃないかよ」って突っ込まれて。
で、その返しが「すいません、私この時二日徹夜してて」って普通に言ってて。ダメだよね?事務所としてダメだよね?」
O「うん」
G「コンプラ的にどうなんだと。日本だったら言えなくない?この時二日徹夜してましてって言ったらさ、事務所どうなってんだって話になるじゃん。韓国だとまだ、そこは言っても大丈夫な感じで、笑いになってたけど、こっちは見ながら、それ笑えない笑えない、事務所の体制笑えないと思って。とか。だから、働かせすぎるきらいがあるんでね、どうしても」
O「うん」
G「それで、TWICEについてなんですけど、一本コラム書こうと思ってて。「TWICEは英語歌詞の曲を歌うか」という問題を考えたいわけ」
O「ほー」
G「要するに、世界戦略ってものがあるわけじゃん。で、世界進出するときに、英語の歌を歌いますって人たちが今までもいたよね?例えば少女時代は「The Boys」って曲とかで……」
O「タクシーね」
G「はーーーーーーーー……話の腰折ってるだけだよね」
O「ごめんなさい続けてください(笑)」
G「で、英語の歌詞の曲歌って、ま、あんまりセールス的に成功しなかったりしたわけで。あと、日本で言うと宇多田ヒカルって人が世界デビューしたでしょ。英語の曲を出したじゃん。ああいう感じで、英語の曲を歌うのかなって言うのが、関心の中にあって。TWICEはデビュー以降、デビュー曲の「OOH-AHH하게」って曲以外は、シングル扱いの曲に韓国語のタイトルを付けてないわけよ。「CHEER UP」「TT」「KNOCK KNOCK」「SIGNAL」「LIKEY」「Heart Shaker」
全部英語ね。最初っから多分、世界進出を見越してタイトルを付けてるはずだし、だからサビも、「TT」とか、一番キャッチーなところは全部英語でできてたりするじゃん」
O「うん」
G「途中「ノムヘ」とか入ったりするけども。考えていくと、どうなんだろうなと思ってさ。でも、世界進出はしていかなければならなくなるじゃん、これから。人気が出ていくからさ。」
O「まあなー、いずれ歌うでしょうね」
G「基本的に、日本のAKBみたいに内側で完結しないじゃん。世界に対してコンテンツを出してくことによって、外貨を得るみたいなところがあるからさ、そうなってくとドンドンひろげていく……」
O「チャングンソク」
G「はーーーーーーーーー……」
O「へへへ、続けてもらっていいんだよ、ただ言ってるだけ」
G「だから、喋ってる途中にチャングンソクって言われた人の気持ちわかる?」
O「ごめんなさい」
G&O「(笑)」
G「そう、資本主義の宿命として、多分もうさ、セールス的には十分だし、韓国国内の人気でも、日本の人気でも食ってはいけるけど、事務所としてはそれじゃダメなんでしょ、どうしても。もっと人気を出したい、世界中で人気になりたい、分かんないけど、南米でも人気になりたい、アフリカでも人気になりたい、アジア各国で人気になりたい、ってなってくわけじゃん。そんときにやっぱり英語詞っていうことになっていくのかな、とも思うし。
でも、この問題を考えるのはすごく難しくてさ、要するに英語の歌を出して、アメリカでメインストリームになるんだ、というのを良いことだとすると、そのメインストリームって何なのって話じゃん。で、ビルボードのトップ100を昨日見てみたのね」
O「おー」
G「そしたら一位の曲が「rockstar」だっけ、で、二位は覚えてないけど、三位がエドシーランで、四位かなんかにリルポンプが入ってて、みたいな。基本的に、日本にいる人だと大半知らなくない?今」
O「そうだよな」
G「大半の人が大半の曲を知らないじゃんトップ100。そういう中で、アメリカのメインストリームも変わってきてんのかなと」
O「ほー」
G「つまり、アメリカのメインストリームみたいなものが、世界に訴求する力、あるいは日本だけかもしれないけど、訴えかける力がなくなってきてんのかな、と思って。だから、アメリアで一位になった曲みんな知ってんの?って時代じゃん今。「rockstar」だって昨日初めて聴いたからね」
O「あ、ほんと」
G「名前は知ってたけど、調べたり、アクセスしないと…」
O「まあそうね」
G「あ、思い出した、二位はカーディー・B」
O「あー」
G「もう知らないじゃんみんな、っていう時代じゃない?再生数はすごいあるけど。ということは、アメリカのチャートの自閉化というか、アメリカのメインストリームも偏ってきている時代なのかもしれないし」
O「なるほど」
G「アメリカで一位になったら世界中の人が聞くかというと、そうでもないっていう時代では、あるっちゃあるなあと。その中で、じゃあアメリカ進出ってどうなっていくんですかー、みたいなのってすごく面白いじゃんこれ。作戦としてどうすんだろうと。
例えばPSYって人がいて、その人は結構ランクの上に行きましたと、馬ダンスの人ね」
O「江南スタイル」
G「ああいう受け取られ方をしたいわけじゃないじゃない。あれはピコ太郎とかと同じラインでしょ、ネタとして、バイラルで受けてるわけだけど」
O「なるほど」
G「でもある種「TT」ってバイラルを狙ってるわけじゃん」
O「バイラル?」
G「要するに、バズるってこと。拡散される曲になること。
で、昨日、ビルボードの記者の人の記事も読んでたんだけど、エスニックのラップとか、メタルとかみたいな意味で、K-POPが受容されてきているっていうわけ」
O「ほー」
G「日本にいる自分たちも分かるじゃん、メタルって好きな人はいるよね、でもランクには入ってこないよね、とか、日本だとヒップホップもそうだけど。そういうものとして受容されつつあるんですよみたいな。要するに、強固なファンベースはある、だがメインストリームではないものとして、一つのシーンとして認められてきているということを言っていて。でもそれって、メインより下に位置づけられている気がしない?」
O「うん」
G「だよね。メインストリームには入れませんよって言われてる気もするじゃん。ジャズは一位にならないじゃんみたいな意味で。ジャズの一位すごいけど、ジャズはメインの一位にはならないじゃん、という意味で。ジャズ、メタル、K-POPみたいな感じに位置づけられてきているんだ、という記事があって。それはそれで、目指しているところとも違うんだろうなとも思うし……
俺的にはコラムを書きたいんだけど、着地点がぜんぜん見えないんだよね」
O「いいじゃん、ない方がいいよ」
G「でも、自分なりにどうなっていくだろうかとか、視点がいるじゃん」
O「どうなっていくんだろうか、でいいじゃん」
G「ぼんやりオチね。でもある程度ビジョンがないと、どうなってほしいもなきゃいけないと思うし。
俺も英語詞の曲を歌わざるをえないんだろう、とは思うけど、少女時代って人たちのメンバーには、アメリカで育ちましたって人がいたわけよ。翻ってTWICEの英語の発音ってどうなのって問題にもなっていくわけじゃん。英語の発音がネイティブじゃなきゃ受け入れられないという人たちが、一定数いるらしくて。だったら韓国語で、オリエンタリズムじゃないけど、例えば日本人として生きてて、今もうK-POPはなんとも思わないけど、タイの曲聞いたらさ、ちょっと空耳的に聞こえるとか、まったく意味が分からなくてちょっと面白く聞こえるみたいなのがあるじゃん?」
O「うん」
G「それを、アメリカに行った場合の韓国語に置き換えるみたいな意味で、よく分からない言語だけど、まあ面白いよね、みたいな受け入れられかたをするのがいいのか、逆にちゃんと英語を学んで、キレイな発音で歌うことを目指した方がいいのかって、なかなか難しくてさ」
O「なるほど」
G「例えば、日本でビルボードトップ100の40位以内に入ったことがあるのは、ピンクレディーと坂本九だけらしいんだけど」
O「へー」
G「坂本九は日本語で歌ってるわけじゃん、「スキヤキ」ね。それってでもさ、アメリカの人からしたら、よく分からない言語で歌われた、カントリーっぽい曲があるぜってことで売れるわけじゃん。それがいいことなの?っていうのはあるよね。」
O「なるほど」
G「難しいなって」
O「バズれば何でもいいのかっていうね」
G「そう、だから今日発表された「Heart Shaker」もさ、きっちり3分十何秒で作られているわけよ。今までずっと話してきたけど、TWICEの曲、工業製品みたいだよね、ぜったい三分ちょいだよね、タイトル曲とかになってるのは。そういうことを意識しているわけじゃん。人々って、芸術というものを離れて、普通の人って、三分ちょい以上の曲聞かないよねとかさ、そういう曲流行らないよねっていうラインで作られているわけじゃん。
でね、菊地成孔って人の「粋な夜電波」ってラジオ番組があるじゃん、それで韓流の会があるのね、それをちょっと聞き直してたんだけど。2011年当時ね、ビヨンセとかそうなんだけど、軍隊をイメージさせるパートを入れんのが流行ってたの」
O「あー」
G「P!nkとか」
O「P!nkね」
G「要するに、「女の子だったらチアガール」じゃなくて、女性の軍隊とか、女性がやってて軍をイメージさせる、軍靴の音を入れたりするのが流行ってたんだって。で、少女時代は2011年にそれをやってるわけ「The Boys」で。翻ってTWICEは、「CHEER UP」を思い出してほしいんだけど、ばっちりチアガールやってるわけ。2011年ではさ、フェミニズムとか分かんないけど、ある種進んだところがあったわけじゃん?それが2016、7年の現在、チアガールに戻ってるわけよ。それって後退なんじゃないかというのもあるし。
なんか、縦で見ている(K-POPの歴史を知っている)人の中に、あんまりTWICEにハマってない人もいるの。それはやっぱさ、女性の進出?ウーマンリブみたいな観点から見た時に、女性の軍隊まで行ってたものが、チアガールに戻ってるわけじゃん、表現として。それってどうなんだろうっていうのも、改めて歴史を追ってみると色々思うこともあるなあ、そういうの面白いなあって。
チアガールって「女の子」なわけじゃん」
O「うん、かわいい」
G「「女の子役割」なわけじゃん、男の子はできないものなわけじゃん?それって男女平等とかって社会からしたら、逆に戻ってるように見えんじゃないのってことをいいたいわけよ」
O「なるほどねー」
G「うん。こんだけポリコレとか言ってる世界のなかで、ある種戻っている表現なのかなとか、少女時代がクールで、きれいで、みたいなのだとしたら、TWICEは完全にかわいいに振ってるわけじゃん。そう思うと、なんか時計の針が逆に回ってる感じがして面白いなとも思うし、じゃあそれが受ける時代ってなんなんだろう、というのも考えると……結局、日本のアイドルが相対的に力を失ってきていて、紅白に韓国から出場するのがTWICEなわけじゃん?とか思うと、何か、アイドル/かわいい/世界戦略みたいなのって面白いトピックだなと思うよね……まだここまでしか考えは進んでないんだけど」
O「うん、充分」
G「うるせー(笑)」