ブログ「いらけれ」

2

それが、誰の目にも映ることのなかった木だ。隣の木々とは一メートルほど離れている。もちろん隣の木々も誰にも見られたことはなかった。見上げても先端が見えないほどの高さと、抱き着いても手を回せないほどの太さだった。先週からの急な寒さのせいだ、足元は落葉で地面が見えない。
小さな鳥が一羽やってきて、枝にとまった。誰も見ていなかったから鳥は、それから十年そこにいて、飛び立つ気配すら見せない。鳥の目には、他の鳥の姿は見えなかった。歌は聞こえていたけれど、どこからか分からなかった。
小さな虫が二匹やってきて、幹の表面にとても小さな穴をあけた。虫には、それだけができた。一匹は他の虫に食われ、もう一匹はそれを虫なりに感じていた。虫にとって世界は、絶えず送られてくる電波のようなものだ、それを全身で捉えていた。
もう一匹の虫が死んで、その後、鳥も死んだ。


ダニエル・クオン – Judy

ブログ「いらけれ」

プロレスの動画(NXT)を見てたら「タッグパートナーが仕掛けた雪崩式フランケンシュタイナーで飛んできた相手を受け止めてパワーボム」という、めちゃくちゃで訳分からんが超凄い技が出た。凄すぎて笑った。パワーボムしてんのがピート・ダンで、受けてんのがタイラー・ベイトだった。この二人は、UK王座をかけてNXTテイクオーバーシカゴで名勝負を繰り広げた、あの二人だ。UKのプロレスの未来は明るいと思う。この二人にトレント・セブンを加えたユニットの名が「ブリティッシュストロングスタイル」っていうのがもうね。やっぱりストロングスタイルって付けたいわけですよ、実際のスタイルは置いておいて。現代、日本を含めた世界のマットの流れをキャッチアップするのは、さぞ楽しかろう(ぼくは、そこまでしないけど)。ついでにいえば、「ブリティッシュストロングスタイルVSジ・エリート」という動画も上がっている。すごく楽しい世界だ。

WWEの二軍的な位置付けでもある(もう”あった”というべきか)NXTのレスリングが今、上質で熱くて面白い。WWEの本放送を凌ぐほどに。良いプロレスを作っていく段階においては、会場の大きすぎないこと(客との近さ)が必須なのではないかと思っている。そして、良い試合をした選手がちゃんと評価されること。上手く行ってないように見える205 Liveと、NXTの差はそういうところなのではないか。もちろん、ガチのプオタが見に来ているのか、そうでない(子どもなどが多い)か、という違いもあろうが。

プオタという人たち、日本にいて(アメリカやイギリスにいて)世界のレスリングを見ている人たち、の作ってきたものの大きさも感じる。いいレスラーを評価し、(ネット上も含めて)盛り上がる人々。その広がりがあったからこそ、他の国でトップだった選手の試合がWWEで見れてるわけだし(もちろん、別にWWEが一番偉い、WWEが最高と思っているわけではないが)。作り手側の意識も変わってきているというか、「金になるぞ」と思われているのだろう。しかし、裏側には「ユーキャントレッスル」問題があることも知っていなければならない。つまらない試合をする奴だ、と一度評価が定まった選手に対する「ユーキャントレッスル」チャントが、目の前の試合内容に関わらずされてしまうこと。

スマホ的時間感覚(と勝手にぼくが思ってる)からくる「たるさ」に対抗するようなテンポの速さ(ハイスパート化?)、スーパーキックの乱打、技の複雑化による組体操感、禁止技が増えていくWWEと危ない技が多用される傾向にある他団体。あるいは、場外カウントのコールに「10」をかぶせる人々や、フォールのツーカウントの後に「スウィート」と叫ぶ(「too sweet」)人々、ヒールに声援が飛び、ベビーにブーイングが飛ぶことが増えてきていること(観客の問題)。

面白いことと、それを阻害しかねないことは繋がっていて、だからこそ今、現象として”も”プロレスが面白い。


SPARTA LOCALS – 『黄金WAVE』

ブログ「いらけれ」

28日に「とくにないよね」が更新された『#68 NEW

口頭な俺たちの海賊放送は、まさにマスター。飽いてるリスナーが相手だ。
馬鹿話を話し、トリックみてーな見解が、マジックみてーに展開されてく。
社会の暗がりから無限の広がり、流行りの話題?流行らないこそ話してく。

しかし深刻な深刻不足だ、シリアスを取り戻す。
話そー、「もう食えない」ってほどの複雑さを。
探そー、「文句言えない」ってほどの潤沢な語。

これじゃーとても下らない、普通の三行詩のようだよ。
それじゃーとても面白い、異常な博覧強記になるには?
今ここで排出してく、退屈な説教蹴っ飛ばす口の運動!

LIBRO/NEW feat.ポチョムキン

ブログ「いらけれ」

「あることないこと」とは、用心深く人から嫌われない態度で書かれたことだ。周到に、決定的な政治の話題は避けていた。そして、書かなかったことがたくさんあった。例えば、虫歯を見てみぬふりしていた左の奥歯が、骨があるとしらず焼き鮭を噛んで、頭の中に痛みが響くとともに欠けたこと。
そんな風にして僕が書かなかったことは、世界中から顧みられることのない事実として、確かにあった。


Bibio – lovers’ carvings