ブログ「いらけれ」

 その紙袋には、十年分の埃が積もっている。箪笥の上に手を伸ばし、さっさっと埃を払った私は、思ったよりも重いそれを落とさないようにと、少しだけ慎重になった。

 記憶されている高校時代の思い出は、すでに美化が終わっているから、あの頃にあった苦しみを思い出すことはできない。今から思い出せる苦痛にはリアリティがない。私が高校を卒業したのは二〇一〇年だから、今年で丁度十年だ。そのことに思い至ったのは、紙袋の中身を見たからだ。入っていたのは卒業アルバムと文集、色紙には先生たちからの寄せ書きがある。ついでに、三年間のすべての成績表が収められたファイルも入っていて、平均評定4.6という、とても優秀な生徒がそこにいる。その優秀さにもリアリティがない。できる側の人間だった当時の私は、今の私からは想像できない私だ。